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■医食同源(?)と薬膳料理 日常の食品を薬と考える思想は、漢方の国・中国で古代から発展してきました。周の時代の王には食事治療専門の医者が付き、しかもその医師は他の専門医よりも上位にありました。 薬物の古典『神農本草経』には、穀物や野菜、魚貝などの薬物治療に使われない食品についても効能が記載されています。その根本にあるのは食事と薬は同じであるという考え方です。そこから「薬食同源思想」が生まれました。 よく使われている「医食同源」という言葉は、「薬」では化学薬品と誤解されることから、薬を「医」に変えて1970年代前半に紹介された日本での造語です。今世紀に入って急速に一般に浸透してきました。今日の健康ブームを象徴する言葉といえるでしょう。 ですから、根本的には「医食同源」は間違いです。 薬食同源の思想を実践し、考案された料理が「薬膳」です。薬膳とは、中医学論に基づき調理された料理で、病気の予防や回復、保健を目的にした食事のことを言います。 本来の薬膳は、生薬を使ったものだけではなく、我々が日々食べている穀物や野菜、肉、魚、乳製品などの食材の持つ効能をうまく組み合わせてバランスよく相乗効果を挙げるところに妙があります。また、最近は和食も取り入れた、中国料理とはまったく趣の違う薬膳料理も多くなってきました。素材の持つ効能をうまく生かせば、普通の家庭料理でも立派に薬膳になるということなのです。 薬膳か否かは“中医学論に基づいているか否か”が大きなポイントになります。したがって、生薬を使った料理であっても、それが中医学論に基づいたものでなければ薬膳料理とはいえません。そして、もう一つのポイントが“おいしい”ということ。おいしくなければ毎日食べることはできません。また、おいしいと感じる情報が脳に伝達されれば、胃の消化液もスムーズに出てきて消化され、身体にとっての栄養になっていきます。 飽食の時代だからこそ「体へのごちそう」である薬膳が必要とされているのです。 |