理事長あいさつ

 
  “日本の康復医学” 確立を目指して

           康復医学学会 理事長
           復旦大学上海医学院 顧問教授

                   森 昌 夫
 

 近年、医学の世界において、西洋医学(現代医学)と東洋医学(主に中国漢方医学)を統合し、治療医学をより発展させていこうという動きが多く見受けられます。お互いの足らない部分を埋め合い補完していこうとする考えは確かにすばらしいと思いますが、所詮は西洋医学の治療でしかありません。
 同じように、東洋医学と西洋医学は違うものとして考えられている中国においては、その違いをどう捉えているのでしょうか。
  中国でも “治療”を目的としたものとして最重要に考えられているのは西洋医学です。そして、中国における東洋医学はその基本を“健康回復”を目的とした医学におき、「予防医学」、「治療医学」のほかに第3の医学として「康復医学」を確立し、この3医学を一連の医療として対応しているのです。基本的に西洋医学の立場から見て、伝統医学がどうあるべきかを捉えたものが「康復医学」であります。この考え方は非常に合理的です。実際、中国の各医科大学は独自の康復医学の教科書を持っており、総合病院には当たり前に「康復科」が存在し、中国の医療現場においては実践医療として活躍しているのです。康復医学は、思想の原点を古典医学に置き、伝統方薬・整体・気功・鍼灸などそれぞれ独自の立場から確立された東洋医学を、健康回復の目的に沿った形で医療として認定し、実践医学として生かしているのです。

 代替医療は、基本的に西洋医学の延長線上にあってその補完に過ぎず、根本的問題の解決にはなりません。伝統方薬も整体も、気功、鍼灸、古典医学も全て代替だと考えることは、医療の本質と歴史からみても問題です。これらはそれぞれの立場から確立されてきたもので、積極的に取り入れるべき医療です。そして、傷病に対してどう取り入れ、大系づけていくかが大切なのです。

 日本においても、いまや「日本の康復医学」を確立する必要があると考えます。西洋医学と東洋医学を一本化することは、各医学を生かしきれず中途半端なものに終わる可能性があります。私はここに、生理学の立場から康復医学の初級教本を著し、専門とする先生方への今後の提案を行いながら、日本の康復医学の定着・発展の一助としていきたいと考えています。

森 昌夫(もり・まさお) プロフィール
康復医学学会 理事長、復旦大学上海医学院 顧問教授、微小循環研究所 所長。
薬用真菌類(HM-3000:特系霊芝など)の研究を手がけ、現代病の克服の新しい理論を確立、提唱している。「末梢血管の血液の流動性」「血液粘滞度」と疾病発生との関係理論にも特筆すべきものがある。東洋医学の研究についての発表も数多く、特に「康復医学」に関して第三の医学としての必要性をいち早く主張したことに対する評価は高い。1989年より、和漢生薬研究所と上海医科大学との「生薬・霊芝の科学的共同研究」における日本側研究チーム責任者として当研究の推進に当たる傍ら、研究会講師として精力的に全国を回っている。
■著書:『霊芝研究1』(上海医科大学出版社)、『HM真菌エビデンス〜自然食菌の同定から臨床まで〜』(微小循環研究所)、『霊芝でみるみる血圧が下がった!!』(東洋医学舎)、『甦れ!! 巨人選手たち 霊芝で日本一だ』(東洋医学舎)、『康復医学大綱』(微小循環研究所出版局)など。