微小循環の研究

 康復医学の提唱する健康ポイントのひとつは「血流」です。康復医学では、“微小循環の血流改善”を新たな健康の基準に設定しており、この康復基準によって、傷病の再発および合併症の回避をめざし、QALYの向上へとつなげていきます。

■微小循環 とは
 最新の生理学教科書『新生理学大系・循環の生理学』の中では、微小循環は以下のように定義されています。
「毛細血管床とその輸入、輸出血管である細動脈、細静脈を一括して微小血管系と呼ぶ。血液循環の主目的が生体内部環境の維持、すなわち全身の各組織細胞に対する生活物質の供給と代謝産物の除去にあることを考えるならば、微小循環こそまさに循環系で最も本質的な役割を演じる部分であり、心臓や太い血管は微小循環に適切な血流を供給する為の補助装置である。全身の細胞の生活条件は微小循環によって直接規定される。微小循環の障害は当該組織の機能不全を引き起こし、障害の部位と広さによって生命の喪失につながる。この意味においては微小循環の世界は、その名称から想像されるような微小な存在ではなく、細胞の個々からその統合体としての個体の生命維持を直接左右する巨大なシステムである」。

■微小循環の概念
1)解剖学的概念:
 細動脈、毛細血管、細静脈

微小循環1

2)生理学的概念:
 抵抗血管(細動脈)、交換血管(毛細血管)、容量血管(細静脈)及び細胞間の物質交換、毛細リンパ管の間に無数の微小な通路中の組織液の循環。毛細血管は、血液と組織細胞との間の物質交換の場として、血管系の主要機能を営んでいる。

微小循環2











■微小循環血流

 微小循還とは微小血管系内の血液の流れを意味します。しかし現在一般に用いられている微小血管系内の血流に加えて、系内血液―間質液―組織細胞間の物質移動、間質液の流れとリンパ系を通じての輸送などをも包括します。
 微小循環では毛細血管壁を通じて物質の交換が行なわれるため、その動脈側と静脈側では血液の組成のみならず粘性が異なります。毛細血管網への輸入、輸出血管である細動、静脈の血流は、自己調節並びに神経性、体液性調節を受けています。
 血液の粘性は赤血球の流動状態と密接に関係しますが、これにかかわる因子として、@赤血球の形状、A赤血球内容の粘性、B赤血球膜の弾性、C血漿の粘性、D赤血球の凝集能などがあげられます。もちろんヘマトクリット値や温度によっても血液の粘性は変化します。
※参考文献:『新生理学講義』(南山堂/鈴木 泰三・星 猛 編)

■血液の働き
 私たちの全体重の8%が血液です。血液の働きは運搬、調節、防御、止血と大きく4つに分けられます。
 赤血球の大きさは直径約8〜5μm厚さ約2μmで、中央がへこんだ円盤のような形をしています。核はなく、酸素を体内の組織や器官へ運搬し、二酸化炭素や老廃物を排出します。ヘモグロビンという赤い色素を持ったたんぱく質を含み、1μl中に、男性なら約500万、女性なら約450万個もの数で体内に約100〜120日間生存します。浸透圧や熱などの調節維持作用がある赤血球が、もっと細い微小循環へと入って仕事をしています。
 白血球は、赤血球より大き直径約10〜25μmで核が存在する細胞で、細菌、ウイルスから体を守るという大切な役割を持ち、1μlに約4000〜9000個、種類により数ヶ月〜数年存在するものもありますが、だいたい3〜5日間体内で活躍します。この白血球も細い微小循環へと入って行きます。
 血小板は、直径約2〜4μmで核はなく、止血作用があり赤血球が傷口から溢れるのを防ぎます。1μlあたり10万〜40万個あり、1つの血小板は約10日間働きます。
 血漿にはその他、たんぱく質、糖質、脂質、電解質、非たんぱく窒素、ホルモンなどが含まれています。これらが細い微小循環へと入って行くために赤血球はやわらかく変形します。
 病変やストレスなどによって、血漿粘度、赤血球の変形能低下、凝集、毛細血管の収縮など様々な変化が起こり、血液の流れが悪くなるのです。

■血流観察
微小循環3




 マイキュレーターを使って、動的、連続的に微小循環を観察します。
 この装置では、血管、血流状態を追跡することができ、微小循環(毛細血管)の形態、流動状態、ループ、血管口径、血流速度を観察することができます。

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■微小循環観察機「マイキュレーター」の特徴
1.動的、連続的に微小循環を観察することが出来る。
2.操作は簡単、画面の映像保存、保存画像で血管、血流状態を追跡観察することが出来る。
3.微小循環(毛細血管)の形態、流動状態、ループ、血管口径、血流速度などを観察することができる。
4.高品質のCCDカメラで、鮮明な画像が映像化可能。
5.特殊な光源で照射し、光の出力は安定的である。

● よく見られる血管のタイプと注意点
 以下の画像は、微小循環(毛細血管)の血流観察写真をもとにタイプ分けした一例である。
 通常は血流がライブ動画で観察できる。画像の中のヘアピン状の黒い線が微小循環(毛細血管)で、1本が約1/100mmである。

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