ホルミシス部会(Expert committee of Hormesis)


【ホルミシス効果による糖尿への影響】
ホルミシス部会 部会長 妻鹿保夫

1.はじめに
 昔よりラドン温泉(ラジウム温泉とも呼ばれる)は「不老長寿の湯」と言われ、糖尿病、高血圧などの疾患の湯治場として親しまれてきました。オーストリアのバドガシュタイン坑道、米国のモンタナ州のラドン・ヘルスマイン、日本の三朝温泉(鳥取)および玉川温泉(秋田)は世界4大ラドン温泉と呼ばれています。いずれの温泉も肺からのラドンガスの吸入療法で、適応症として糖尿病が挙げられています。このように低線量放射線による人体への効能を、「ホルミシス効果」と言います。

2.ホルミシス効果
 NASAの委託を受け、ミズリー大学のラッキー博士は宇宙飛行士の大気圏外活動(地上の100倍の放射線量)における飛行士体内への影響を10年に渡って研究を重ねました。その結果、「微量な放射線(10倍〜100倍)は体の免疫力を向上させるのに有益である」という説を1982年に発表しました。
 これまで経験的に信じられてきたラジウム・ラドン温泉の有効性は、このホルミシス効果により理論化されたのです。

3.ラジウム・ラドン温泉とは
 ラジウム・ラドンはウラン(u-238)から生成され、放射線を出しながら壊変していきます。つまりラジウム(Ra-226)からラドン(Rn-222)になり、ボロニウム(Po-210)を経て最終的に鉛(Pb-206)となります。ラドン温泉の温泉水は地下水で、天然ウラン鉱石に接触し、ウランから生成されたラジウム、さらにこれより生成されたラドンを含みます。このような水が地上に湧き出て、湯船に貯められた場所がラジウム温泉です(ラジウム温泉とラドン温泉は同じ意味で使われています)。
 治療に使えるラドン温泉(治療泉)としては、温泉法上、111ベクレル以上の放射能(Rn-222)濃度が求められます。
 ラドン(ガス)は呼吸により肺に取り込まれ、半減期は3.8日です。

4.ラドンによる免疫バランスの向上
 免疫バランス機能に重要な働きをするのが「ヘルパーT(Th)細胞」で、これにはTh1とTh2の二つがあります。両細胞はそれぞれ産生するサイトカインにより牽制しあうことにより相互のバランスが保たれ、健康状態が維持されています。このバランスが崩れたときに種々の疾患が発症します。このバランスを維持するためにTh1細胞とTh2細胞の過度な活性化を制御するT細胞として制御性T細胞(Treg)が発見されました。
 ラドン療法での放射線の暴露がこれらのT細胞に有効な影響を与えるとみられます。

5.人工ラドン温泉(ホルミシス効果)での実験事例
@ウランが含まれる人工タイル150枚を密閉したルーム(広さ 1.5畳、高さ1.9m)に貼り付け、250ベクレル放射線(Rn-222)を実現しました。
  数値的に玉川温泉、三朝温泉と全く同じ状態に設定しました。
A長年糖尿を患っている被験者に週3回(1回1時間半)ルームに入ってもらい、1か月間この人工ラドンルームを体験してもらいました。
Bラドンルームに入る前の数値(2014/7/8)と1か月後の数値(2014/8/12)を比較しました。

1)血糖値:324から132に減少。
2)ヘモグロビンA1c(HbA1c)値: 9.6から6.8に減少