ストレス(SFT)部会(Expert committee of Stress free)

 傷病後の健康回復を主要研究テーマに掲げている当康復医学学会では、病気の再発や合併症に大きく関わってくるストレスに関してより深く探求してまいります。そして、ストレスに伴ううつ症状やや精神的苦痛を解消するために、この「ストレス部会」を設けています。
 不定期ですが、当学会主催で『ストレスフリートレーニング(SFT)講座』を開講し、日常のストレスでダメージを受けている心と身体の解消法をお伝えしています。

■ストレスとは
 ストレスとはもともと物理学用語の、外部からのプレッシャー(ストレッサ―)を受けて、バネの内部に生じる“ひずみ”を表す言葉です。しかし一般的には悪い結果となる現象すべてをいいます。つまり、外的あるいは内的な刺激を受けること、生命体に生じる“ひずみ”状態のことです。例えば、気温の変化などに適応する、食べ物や水が変わればそれに適応する、人間関係などでの心理的ショックを受ければそれに適応する。そうした環境に適応していく時の反応と段階に該当します。


■原因は
 私たちはストレスによって、何らかの反応を起こします。
 この原因となるのは
@物理的 A化学的 B生物学的 C心理社会的 な刺激によるものです。特に現代ではCによって引き起こされたストレスが問題となっています。

■ストレス耐性
 忌(いむ)・忍(しのぶ)・怒る・恐(おそれる)・恥(はじる)・恋・悲(かなしむ)・愁(うれう)・慕(したう)など、部首に「心」が付く漢字は、感情を表します。感情とはヒト・動物が物事などに感じて抱く気持ちのことで、これを感じる強さの違いが“個性”となります。
 同様に、同じ状況でも、強くストレスを感じる人とそうでもない人がいます。例えば、人から怒鳴られた時「うれしい!あの人は私に目をかけてくれている」と受け止める人と、「ああ、自分は本当に駄目人間だ。才能も可能性もない」と落ち込む人とでは、前者の方がストレスに強いといえます。これは、考え方や物事の捉え方の癖による違いですが前者のようなことを、「ストレス耐性が高い」といいます。ストレスにどれだけ耐えられるかという「こころの柔軟性や強さ」のことをいいます。
 継続的にしかも多種多様なストレスを職場や学校、家庭など、あらゆるシーンで受けている現代人にととって、ストレスの耐性を高めること、ストレスに強くなることをいかに身につけていくかは重要なポイントとなります。
 

■ストレスと疲労
 ストレスを過剰に受けたり、長期にわたってストレス状態が続いたりすることで、様々な自覚症状を伴います。こころの病においては、睡眠障害や疲労感、頭痛、肩こりなどの訴えが多く、自覚症状は多様性ゆえに一般的対処療法ではなかなか改善されにくいようです。

■ストレスはどこで感じるか
 ストレスによる体の変調を知らせてくれるサインのひとつでもある「疲労」は、乳酸など様々な説があります。疲労学会の研究による疲労の発生メカニズムは、脳の特定の神経回路と血液中のコエンザイムQ10(CoQ10)の濃度が強く関わっていることが明らかにされています。
 疲労は、肉体疲労で手や足、腰がだるいとしても、手足、腰の筋肉で疲労を感じているのではありません。筋肉の抹消から脳に信号が伝わり、脳で「疲れた」という感覚が生じて、意欲や行動が低下すると考えられています。また、血液中のCoQ10濃度を測定すると、疲労負担をかける前とかけている間では、疲労負担をかけているときのほうが、血中のCoQ10濃度は著しく低下しているとの結果が出ています。

■ストレスは脳の中にある
 人の心と体は複雑に絡み合って働き脳が中心となって調整しています。ストレスを最初に受け止めるのは脳です。脳はストレスと戦おうとして、自発的に周囲神経系に命令を出し調整します。そして正常の状態に保つようさまざまな信号(情報伝達物質)を送り出します。しかし、情報伝達物質は常に潤沢にあるわけではなく、過剰なストレス状態によってバランスを崩してしまい生体の全体がうまく機能しません。また、神経系は免疫系とも密接につながっているので病気への抵抗力が落ちてきます。つまり、外からのストレスそのものではなく、これを調節する脳内の神経伝達物質セロトニンが減少することでストレス状態に陥ってしまいます。

■人は「脳」と「体」でできている
 人間の体は、神経系を司令部として色々なシステムが互いに協力しあうことによって健康が保たれています。しかし、脳内セロトニンが減少すると、大脳・中枢神経のバランスが崩れ、特に自律神経・内分泌・免疫系への支配が失調します。そして、心拍数上がり血管が収縮し血圧が上がり、睡眠障害・頭痛・肩こり・冷えなどの症状が出ます。さらに、免疫機能にも乱れが生じます。免疫系はウイルスや細菌をはじめとする異物の侵入から体を守るための防御機能を司るシステムですから、このシステムが正常に働かないと、アレルギーやがんなどの病気を引き起こすこともあると言われています。特に免疫系は、心の持ち方に大きく左右されるようです。

■代表的な脳内伝達物質の役割
【セロトニン】
 約50数種類あるといわれる脳内伝達物質は、まさにオーケストラのように一曲の音楽を奏でます。セロトニンは、脳内のオーケストラをまとめる総合指揮者と言われる所以です。
 また、睡眠に大きく関わる、生体時計の睡眠リズムを作るメラトニンの原料もセロトニンです。 
   
【ノルアドレナリン】
 会社や家庭内などで嫌なことがありストレスにさらされ、落ち込んだり疲れたり不快になります。そのとき働くのがノルアドレナリンです。関連した病気では、PTSD(外傷性ストレス症候群)などがあります(犯罪や事件の被害者などが陥る病気です)。


【ドーパミン】
 何かとってもいいことがあった時、喜びやうれしいことなどがあったりすると働きます。ただし「快」ばかりにひきずられると、それがなければ生きられない依存状態になってしまいます。


■セロトニンとは
 セロトニンは、脳内伝達物質のひとつです。不安感やイライラ感を抑える作用でも知られています。神経伝達物質であるドーパミン(喜び、快楽)、ノルアドレナリン(恐れ、驚き)などの情報をコントロールし、精神を安定させる作用があります。このため、セロトニンが不足すると感情にブレーキがかかりにくくなりキレる、ヒステリー、睡眠障害(不眠)などになります。また、セロトニンが低下すると動物の攻撃性が高まることが知られています。
 
 ストレスがたまっているときに、温泉に入る・体操・断食・座禅・深呼吸をすると癒されたと感じるのは、脳内にセロトニンが増え、高まっていたノルアドレナリンが減らされるからといわれています。 

 ※セロトニンの詳細については、「研究内容」の「脳内セロトニンの研究」をご覧ください。